東京都交響楽団(第816回)
10月15日・東京芸術劇場■下野竜也(指揮)、鈴木学(ヴィオラ)■ペンデレツキ「シャコンヌ」(《ポーランド・レクイエム》より)、武満徹《ア・ストリング・アラウンド・オータム》、チャイコフスキー「交響曲第5番」
……ポーランドの生んだ大教皇を悼んでの曲だが下野はしかし、抒情感に訴えかける旋律を際立って響かせるのではなく、弦だけながら各セクションをクリアに響かせる透明感ある塑像で、静かに聴き手の想いを揺るがす指揮。武満作品では、周密になったり霧がかったりまた水しぶきが飛ぶような多様な響きの瞬間を下野竜也は都響から自在に引き出した。……チャイコフスキーでも甘い語り口に拘泥しない下野は、第2楽章をはじめ最後までアゴーギクや音量の高低を抑え、それだけにそれらを取り払った最高の高揚が最後に待っていた。〈小倉多美子〉
「音楽の友」2016年12月号より